治療費
治療のために医師や整骨院等にかかった費用です。
必要かつ相当な実費全額が損害賠償の対象となります。
交通事故の被害に遭って入院したり通院したりする場合には、通常、自賠責保険を利用して治療費が支払われます。
整骨院・接骨院等の施術費は、交通事故の賠償金として常に認められるわけではないので注意が必要です。
整骨院・接骨院の施術費が、交通事故の賠償金として認められるためには、症状により有効かつ相当であること、医師の指示がある場合には認められる傾向にあります。
医師による明示的な指示がなくとも、医師が黙認している場合でも、認められることがあります。
通院交通費
交通事故の被害に遭って通院を余儀なくされた場合にかかる交通費です。
通常は、電車・バスの料金や自家用車を利用した場合のガソリン代です。
症状によって公共交通機関が利用できない場合、公共交通機関によるとあまりにも不便な場合にはタクシー利用も認められます。
通院に家族の付き添い看護が必要な場合には、家族の分の交通費も認められます。
通院交通費も通常は、自賠責保険を利用して支払われます。
装具・器具購入費
交通事故による受傷の程度・種類に応じて必要なものについて認められます。
例えば、義歯、義眼、義手、義足、眼鏡、コンタクトレンズ、車いす、盲導犬費用、電動ベッド、介護ベッド、コルセット、サポーター、スロープ、歩行訓練器、歯・口腔清掃用具、吸引機、障がい者用はし、脊髄刺激装置等があります。
付添費用
家族が交通事故の被害に遭って入院したり、通院したりする際に、家族の付添いが必要となった場合の費用です。家族が付き添った場合、その時間は、他の仕事ができなくなりますので、損害として認められることがあります。
付添費用が交通事故の損害として認められるかどうかは、医師の指示があるかどうか、交通事故による受傷の程度がどのくらいか、交通事故の被害者の年齢、などを考慮して判断されます。
例えば、交通事故の被害者が幼児である場合や重い骨折等により日常生活に支障が生じているような場合に認められます。
将来介護費
交通事故の被害に遭って、後遺障害が残ったため、将来にわたって介護が必要になった場合には、介護にかかる費用が損害賠償の対象になります。
将来介護費は、医師の指示や症状の程度等を考慮し、必要性があると認められる場合に支払われます。
介護にかかる費用といっても、職業介護人の雇う場合や家族が介護を行う場合の他、定期的な見守り看護で足りる場合など、後遺障害の症状の重さによって様々です。
例えば、後遺障害等級1級や2級に該当するような高次脳機能障害や遷延性意識障害等の後遺障害によって、常時、職業介護人が必要となる場合には、職業介護人に係る費用の実費全額が支払われます。
また、このような後遺障害により、家族の介護・手伝いも必要な場合には、ケースにもよりますが、1日8,000円程度が支払われます。
家族の介護に対して支払われる介護費用は、後遺障害の症状の重さに応じて、異なります。
後遺障害等級3級以下でも将来介護費を認めた例もあります。
例えば、後遺障害等級3級に該当する高次脳機能障害で、常時の付き添いまでは必要ないとされた場合でも、定期的な見守り・看視のための家族の自宅待機が必要であるとして、日額6,000円を認めた裁判例もあります。
雑費
入院した場合には、雑費について定額が支払われます。
症状にもよりますが、通常は、日額1,500円程度とされています。
介護が必要になるほどに重篤な後遺障害を残す場合には、将来にわたって雑費が支払われることがあります。
例えば、脊髄損傷による完全対麻痺等の後遺障害(後遺障害等級1級)を残した場合に、人口導尿のためのカテーテル、ゴム手袋等の用具代として月額5万円の支払いが認められた裁判例があります。
休業損害
有職者の場合
給与所得者(会社員等)の場合には、事故前の収入を基礎として交通事故による受傷によって休業したことによる現実の収入減が損害賠償の対象となります。
現実の収入減がなくとも、有給休暇を使用した場合には休業損害として認められます。
休業中に、昇給、昇格があった後は、その収入を基礎とします。
休業に伴う賞与の減額・不支給、昇給・昇格遅延による損害も含まれます。
事業所得者の場合には、現実の収入減があった場合に認められます。
自営業者などの休業中の固定費(家賃、従業員給与等)の支出は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものとして損害と認められます。
家事従事者(主婦)の場合
主婦の場合でも休業損害が認められます。
専業主婦の場合、賃金センサス(平均賃金)を参考にして、休業損害を算定します。
兼業主婦(パートタイマーなど)については、現実の収入減と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方により算定するのが通常です。
無職者の場合
失業者の場合には、労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものについては認められます。就労の蓋然性は、失業していた事情、失業期間の長さ、就職活動の状況、資格・技能の有無などを考慮して判断されます。
学生の場合には、原則として休業損害は認められませんが、アルバイトなどにより収入があれば認められます。
また、就職遅れによる損害は認められます。
傷害(入通院)慰謝料
交通事故の被害によってケガをしたときから、治ゆまたは症状固定によって、治療が終了したときまでの慰謝料です(後遺障害による慰謝料は別途発生します)。
傷害(入通院)慰謝料は、原則として、入通院期間に応じて算定表(過去の裁判例を参考にして作成されたもの)に基づいて算定されます。
他覚的所見がないむち打ちや軽い打撲・擦り傷の場合には、異なる表を使用します(「別表Ⅱ」と呼ばれます)。
自賠責保険による慰謝料の基準は日額4,200円とされていますが、自賠責保険の基準はあくまで本来支払われるべき慰謝料よりも低額であることが通常ですので、足りない部分は任意保険会社に請求します。
通常は、入通院「期間」を算定表にあてはめますが、通院が長期に渡る場合には、症状、治療内容、通院頻度をふまえ、実通院日数の3.5倍程度を目安とすることがあります。
被害者側の事情(幼児を持つ母親、仕事上の都合など)によって入院期間を短縮した場合には、慰謝料金額を増額することがあります。
入院待機中の期間や入院していなくても骨折によるギプス固定等で安静を要する場合には、入院期間として評価することがあります。
慰謝料が増額されることもあります。
交通事故の被害によるケガが重篤な場合などは、金額を20~30%増額することがあります。
交通事故の被害によって生死が危ぶまれる状態が継続したとき、激痛を伴う手術等の極度の苦痛を味わったとき、手術を繰り返したときにも別途増額を考慮するとされています。
後遺症慰謝料
後遺障害が残った場合に認められる慰謝料です。
過去の裁判例を参考にして後遺障害等級(1級から14級まであります)ごとに目安となる慰謝料額が定められています。
後遺障害認定に至らない後遺症であっても慰謝料が認められる場合があります。
後遺症逸失利益
後遺症を残したために労働能力が低下し、将来にわたって収入が減ることによる損害です。
後遺症逸失利益は、労働能力の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して算定されます。
通常の算定式は、次のとおりです。
- 【基礎収入額(事故前の年収)】×【労働能力喪失率】×【労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】
基礎収入は、原則として事故前の収入を基礎とします。
労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとに定められたものを参考にしつつ、交通事故の被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位・程度、事故前の稼働状況等を総合的に判断します。
労働能力喪失期間は、始期は、症状固定日です。未就労者の始期は、原則18歳ですが、大学生の場合には大学卒業時となります。終期は、原則として67歳です。
症状固定時の年齢が67歳を超える者については、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
むち打ちの場合の労働能力喪失期間については、12級で10年程度、14級で5年程度とする例が多いですが、具体的症状によって判断されるべきものです。
死亡慰謝料
交通事故の被害により死亡した場合の慰謝料です。
死亡慰謝料は、過去の裁判例をもとに被害者の属性別に参考となる金額が定められています。
- 一家の支柱となる者 2800万円
- 母親、配偶者 2500万円
- 独身者、子ども、幼児 2000万円~2500万円
この参考基準は、亡くなられた被害者ご本人の慰謝料の他、近親者の分の慰謝料も含まれているとされています。
死亡逸失利益
交通事故の被害により死亡した場合に、将来にわたって収入がなくなった分の損害です。
通常の算定式は、次のとおりです。
- 【基礎収入額(事故前の年収)】×【1-生活費控除率】×【就労可能年数に対応するライプニッツ係数】
生活費控除率は、おおむね
- 被扶養者1人の者 40%
- 被扶養者2人以上の者 30%
- 主婦、独身、幼児等 30%
とされています。
葬儀費用
交通事故の被害により死亡し、葬儀費用を支出した場合には、この費用についても損害賠償の対象になります。
葬儀費用は、原則として150万円を請求できます。
ただし、実際かかった金額がこれを下回る額の場合には、その額を請求できます。
交通事故によって亡くなられた被害者の社会的地位等により、150万円以上の賠償が認められた裁判例もあります。
香典については、損益相殺されません。
香典返しは損害となりません。
自賠責保険金を受領していない場合には、加害者に対して損害額全額の賠償を請求します。
すでに自賠責保険金を受領している場合には、自賠責保険で足りない分の損害に限り、加害者に対して請求できます。
加害者に対して損害賠償を請求できるのは亡くなった方の相続人に限られます(近親者固有の慰謝料を除く)。
加害者が任意保険に加入している場合には、その保険会社が交渉の窓口になります。
交渉でまとまらない場合には、民事訴訟を提起することで適正な賠償金を得られる可能性が高まります。