交通事故チームの弁護士　五十嵐　亮（長岡事務所所属）　です。

このコラムでは、交通事故被害者救済を行う弁護士が、日々感じたことを書いていきます。

交通事故によりお母さんが重傷を負った方の話です。

お母さんが交通事故の被害にあい、息子さんが相談に来られるということはよくある話です。

特にお母さんが重傷を負った方の場合には、息子さんの心情としては、「加害者が許せない」「保険会社の対応が悪い」ということで、相談にも熱が入ります。

ご相談された方のお母さんは、交通事故により大腿骨等を骨折され、歩くのが不自由になってしまった方で、関節の可動域制限が後遺障害として認定されました。

賠償請求の交渉の中で、逸失利益が大きな争点となりました。

重度の骨折などにより、関節の可動域制限や疼痛（痛み）といった後遺障害が残る場合には、主に後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が賠償の項目として追加されますが、お母さんがご高齢の場合、逸失利益が特に問題になります。

ご家族と同居しているお母さんであれば、賠償実務上、専業主婦として取り扱われ、平均賃金を参考にして逸失利益が計算されますが、一人暮らしで無職の場合には、逸失利益が算定できない場合もあります。

この方の場合は、お母さんが一人暮らしでしたので、保険会社から逸失利益につき「ゼロ」提示を受けました。

保険会社からこのような提示をされてしまうと、ご本人よりも息子さんの方が許せない気持ちが強くなってしまうことは、よくありますし、自然なことだと思います（それだけ息子の母に対する愛情が深いのでしょう。）

このケースは、逸失利益以外の部分で譲歩してもらい、無事に示談で終わりました。

しかし一般論として、ご家族が交通事故の被害にあった場合、被害者ご本人よりもご家族の方が感情的になり、保険会社から「クレーマー」のような扱いをされてしまうこともあります（そのような対応が怒りを増幅させてしまい交渉が長引く一因なのですが。）

私としては、自分の相談者・依頼者がたとえ本当にクレーマーのような状態になっていたとしても、ご家族が交通事故にあって苦しい思いをしているのですから、そのような方の気持ちはできる限り、聞き、尊重し、くみ取ってあげたいなあと思っています。

実際はまだまだ修行が足らないのですが、今後とも研鑽を積んでまいりたいと思います。

一新総合法律事務所は、新潟市、長岡市、上越市、燕三条、新発田市、長野市、松本市、高崎市、東京都の9拠点に事務所を有する、新潟県内最大規模の法律事務所です。
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こちらもあわせてご覧ください。

交通事故弁護士コラム(1)「足が軽くなった！懸命に治療に取り組むご依頼者様の笑顔」

交通事故弁護士コラム(2)「交通事故の影響で失語症が残ったご依頼者様の事案」

この記事を執筆した弁護士

五十嵐　亮
（いからし　りょう）

弁護士法人一新総合法律事務所　
理事／弁護士

出身地：新潟県新潟市　
出身大学：同志社大学法科大学院修了
新潟県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会（平成22年～）、新潟県弁護士会常議員（平成28年度）、長岡警察署被害者支援連絡協議会会長（令和2年～）、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般（労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など）、交通事故、離婚。事故賠償チームに所属。
著書に、『労働災害の法律実務（共著）』（ぎょうせい）、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』（労働法律旬報No.1889）があります。