交通事故チームの弁護士　五十嵐　亮（長岡事務所所属）　です。

このコラムでは、交通事故被害者救済を行う弁護士が、日々感じたことを書いていきます。

交通事故によって怪我を負い後遺障害認定をされるようなケースでは、将来にわたって介護が必要になることもあります。

後遺障害認定を受けると、通常、後遺症慰謝料および後遺症逸失利益が支払われます。
後遺障害が残存し、その後も介護が必要であれば、後遺症慰謝料および後遺症逸失利益の他に、「将来介護費」が支払われることがあります。

どのような場合に、「将来介護費」が支払われるのでしょうか？

裁判例によると、将来介護費は、
・医師の指示がある場合
・症状の程度により介護が必要と認められる場合
に支払われます。

将来介護費は、施設入所している場合と在宅介護の場合で異なります。
施設入所の場合は、施設費用になります。
在宅介護の場合には、職業介護人（ヘルパー等）の費用の他、家族も介護している場合には、通常、日額８０００円が支払われます（家族の介護費用については症状によって増減があります）。

以下に、裁判例で将来介護費が認められたケースを紹介します。

〇遷延性意識障害（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（３８歳）につき、妻による付添介護費として、日額１万円および職業介護人の費用として１日３時間で１万円を週５日分の３４年分（妻が６７歳まで）の合計約９７９６万円の支払が認められた

〇遷延性意識障害（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（２６歳）につき、在宅介護を選択し、２４時間の介護、２人の人手が必要になるとして、平均余命まで日額約２万円の合計約１億２５０２万円の支払を認めた

〇遷延性意識障害（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（４５歳）につき、施設入所中の付添介護費として日額３０００円、施設退所後の自宅介護費として、妻が６７歳までは平日は近親者介護費日額１万円、休日は職業介護人２人分日額約３万円、その後平均余命までは職業介護人２人分日額約３万円の合計１億０１２２万円の支払を認めた

〇高次脳機能障害（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（７歳）について、常時見守り・身体介護を必要とすることから、
被害者が養護学校高等部を卒業するまでの間につき、日額１万５０００円、被害者が養護学校卒業から６７歳の間につき、日額２万円、６７歳から平均余命までは日額３万円の合計１億３４４２万円を認めた

〇高次脳機能障害（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（２５歳）につき、高度の認知障害、性格変化が明らかで（幼児返りのため力加減なく両親にスキンシップを求めてくる）、将来においては職業介護人に依頼する必要も認められることから、日額１万２０００円の付添介護費を認めた

〇脊髄損傷による両上下肢麻痺等（後遺障害等級１級）の交通事故被害者（５９歳）につき、職業付添人による介護が必要であるとして、日額１万６０００円の付添介護費を認めた

〇第５頚髄損傷による軽度四肢麻痺（後遺障害等級３級）の交通事故被害者（６７歳）につき、入浴全介助、ボタンのある衣類の脱ぎ着に介助を要するとして、日額５０００円の付添介護費を認めた

遷延性意識障害（いわゆる「植物状態」）や脊髄損傷により手足が麻痺したような場合には、将来介護費が高額化する傾向にあります。
その場合には、交渉では解決が困難な場合も多くあります。
また、そのように重度の後遺症ではない件でも将来介護費を認めているケースもありますので、是非弁護士にご相談ください。

一新総合法律事務所は、新潟市、長岡市、上越市、燕三条、新発田市、長野市、松本市、高崎市、東京都の9拠点に事務所を有する、新潟県内最大規模の法律事務所です。
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この記事を執筆した弁護士

五十嵐　亮
（いからし　りょう）

弁護士法人一新総合法律事務所　
理事／弁護士

出身地：新潟県新潟市　
出身大学：同志社大学法科大学院修了
新潟県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会（平成22年～）、新潟県弁護士会常議員（平成28年度）、長岡警察署被害者支援連絡協議会会長（令和2年～）、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般（労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など）、交通事故、離婚。事故賠償チームに所属。
著書に、『労働災害の法律実務（共著）』（ぎょうせい）、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』（労働法律旬報No.1889）があります。