医師の指示がある場合は問題ありませんが、医師の指示がない場合にも付添費用が請求できるでしょうか。
この点、完全看護制の事実から、付添の必要性を否定する例もあります(仙台高判平成24年12月27日)。
これに対し、主要な看護は病院側のスタッフが行うとしても、行き届かない点を近親者が補助したり、意識障害のある被害者に声を掛けたり身体をさすったりするなど近親者が看護を行うことが有益という見解もあります。
このような見解に基づいて、付添費を認める例もあります。
このような状態の場合、完全看護制とはいえ、意識覚醒のための声がけ、痰が詰まったとき看護師を呼ぶなど容態の変化の看護、体位変換による褥瘡防止、マッサージによる関節拘縮防止、食事、清拭(せいしき)、排泄といった日常生活動作の介助、脳機能の障害による自傷や徘徊などの問題行動の看視といった行為を近親者が行っていることを指摘して、付添いの必要性を認める裁判例があります。
患部をギブスで固定したり足を吊ったりするなど、手足の負傷やその治療により行動が制約されている場合に、近親者等が食事、排泄、着替え、歩行などの介助を行っていることを指摘して、付添の必要性を認めている例があります。
もっとも、治療の段階によって、付添の必要性の評価にも差が生ずるでしょう。
右足関節内果骨折により整復固定手術を受けた事例で、車椅子で安定して移動していることや、松葉杖でトイレに行くことができる状態であったことから、近親者の付添の必要性を否定した例もあります(東京地判平成25年3月26日)。
このように負傷の部位・程度のみならず、入院生活にどのような支障があり、近親者にどのような介助をしてもらったのかを、具体的に立証していくことが重要となります。
自賠責の取扱いでは、原則として12歳以下の子どもに近親者が付き添った場合には入院中の看護料として1日につき4100円が認められています。
軽傷の場合は、基本的に付添の必要性は認められ難いでしょう。
認められた例としては、33歳女性が頚部挫傷、要部挫傷の障害を負い、その後事故による心的外傷を契機として少なくともPTSD様の症状を発症したと認定された事案で、精神科入院中に母が付き添ったものがあります。
単なる不安とかのレベルではなく、現実に具体的な不調を来すに至っていることが求められるようです。
医療上・介護上の観点を重視する立場からは否定され、肉親の情誼としての面を重視する立場からは肯定されており、結論が大きく分かれています。
付添の必要性とは、必ずしも付添が必要不可欠である場合に限定されるわけではなく、医療上の観点、介護上の観点、その他社会通念上の観点から、傷害の内容及び程度、治療状況、日常生活への支障の有無、付添看護の内容、被害者の年齢等の事情を総合考慮し、また、場合によっては近親者の情誼としての面も考慮して、付添が必要・有益ないしは相当であると評価できるときに、認められるようです。
付添の事実とは、実際に病院へ行き、付添いと評価できる行為をしたことをいいます。
病院に行っていても、単なる見舞や、医師の説明を受けて手続をしただけ(大阪高判平成21年9月11日)などの場合は、付添いと評価できないとされる場合もあります。
面会謝絶の期間や、集中治療室に在室していた期間については、否定するものと、容態の急変等に備えるため待機していることを要したなどとして付添を認めるものがあります。
職業付添人を依頼した場合には必要かつ相当な実費が認められます。
近親者が付き添った場合、現実には被害者から近親者に対して費用が支払われることはないので、その損害をどのようにみるのか問題となります。
「被害者が受傷により付添看護を必要とし、親子、配偶者などの近親者の付添看護を受けた場合には、現実に付添看護料の支払いをせずまたはその支払請求を受けていなくても、被害者は近親者の付添看護料相当額の損害を蒙ったものとして、加害者に対しその賠償を請求することができるものと解するを相当とする。けだし、親子、配偶者などの近親者に身体の故障があるときに近親者がその身のまわりの世話をすることは肉親の情誼に出ることが多いことはもとよりであるが、それらの者の提供した労働はこれを金銭的に評価しえないものではなく、ただ、実際には両者の身分関係上その出捐を免れていることが多いだけで、このような場合には肉親たるの身分関係に起因する恩恵の効果を加害者にまで及ぼすものではなく、被害者は、近親者の付添看護料相当額の損害を蒙ったものとして、加害者に対してその賠償を請求することができると解すべきだからである。」
(最高裁昭和46年6月29日判決)
赤い本では「1日につき6500円」「症状の程度により、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割~3割の範囲で増額を考慮することがある。」
青本では「1日につき5500円~7000円」とされています。
被害者の状態が極めて危篤な場合や、被害者が年少である場合など、長時間の付添いや負担の重い濃密な介護が必要となった場合い、概ね8000円から8500円くらいまでの間で、高めの金額を認められた例があります。
例えば、7歳の子どもが、びまん性軸索損傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折、骨盤骨折、肝損傷等の傷害を負った事例で、事故当時小学一年生であったこと、意識不明の重体であったことなどから、付添費日額8000円は高額とはいえないとした裁判例(福岡高判平成24年7月31日)がある。
泊まり込みを要するような極めて負担の重い看護を要した場合など、日額1万円以上の金額を認めている裁判例(大阪地判平成26年5月28日)もあります。
反対に、身体機能の制約が一部であり、部分的な介護にとどまる場合や、有職者が勤務の合間に付添するなど、付添時間が短い場合、危篤状態での付添のよに、肉親の情誼としての意味が強く特段医療上の行為をしていない事案で入院付添費を認める場合、洗濯物の交換、日用品の差し入れのみ否定するものもあるで、付添としての実態が乏しい場合などは、1000円とか2000円位から一般的な基準額より低めの日額を定めた例もあります。
必ずしも人数分の入院付添費が認められるわけではなく、付添の必要性、付添行為の内容、付添に要する人数を考慮して相当な額の入院付添費が認められます。
事故当時12歳でびまん性軸索損傷、脳挫傷、膵臓破裂等の傷害を負った事案で、入院当初の1ヵ月半は極めて重篤な症状であり、複数の近親者が交代で24時間態勢で看護する必要があったとして、看護の中心となった被害者の母の分として日額8500円、他の近親者の分として日額5000円を計上したものがあります(鹿児島地裁鹿屋支部平成21年1月29日)。
また、62歳男性が外傷性くも膜下出血等の傷害を負った事案で、事故直後から強い興奮状態を示し、強い見識障害から時に大声で騒ぎ立て、暴力的な行動をしたため、2人がかりないし交替で付添を行ったことから日額8000円を認めたものがあります(名古屋地判平成26年4月22日)。
認められる場合があります。
もっとも、これらは当然に発生するものであり、日額の基準額に含まれているとして、特別の事情がない限り、基準額に加えて別途計上することはしないこともあります。
被害者が交通事故により脳挫傷等の重篤な傷害負い、危篤状態で1週間にわたり意識が混濁した状態となった事案で、事故の2日前にウィーン留学のため出航していた被害者の娘が、事故の連絡を受けて急遽引き返した事案で、「被害者の傷害の程度、当該近親者が看護に当たることの必要性等の諸般の事情からみて社会通念上相当であり、被害者が近親者に対し右旅費を返還又は償還すべきものと認められるときには」、一定の範囲内で旅費の損害を認めています(最高裁昭和49年4月25日判決)。
一定の範囲とは、「旅費は近親者が被害者の許に往復するために通常利用される交通機関の普通運賃の限度内」とされました。 宿泊を要した場合も肯定した例あります(大阪地判平成24年4月26日)。
請求があったときでも一般的な基準額を参考にして付添費が算定されます。
裁判例の中には、10歳の男子が事故により心肺停止状態となり、昏睡状態が続き、42日間の入院の後死亡した事案につき、22.5日分の休業損害約55万円を認めたものもあります(名古屋地判平成25年2月27日)。
近親者が休業して付添をする必要性が認められるのであれば、近親者の休業損害相当額を基礎として入院付添費を算定することは可能と考えられますが、いわゆる完全看護の下、そのような必要性が認められるかが問題となります。
例えば、近親者が高額所得者など職業付添人費用を超える場合、通常は、職業付添人を頼めば足りるから、これを超える部分は相当因果関係のある損害にあたらないと考えられます。
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