平成28年5月末に施行された、改正保険業法の概要を、一般社団法人日本損害保険協会及び、一般社団法人生命保険協会が公表したQ&A集「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に関するQ&A」の一部を引用してご紹介します。
●法改正のポイント
今回の保険業法改正のポイントは、
①保険募集の際の情報提供義務・意向把握義務などの保険募集に係る基本的ルールの創設
②代理店などの保険募集人に対する体制整備義務の導入
です。
●保険募集の際の基本的ルール
これまで、法律上定められていた募集規制は、虚偽の説明等、「不適切な行為の禁止」 に限定されていました。
顧客ニーズの把握に始まり保険契約の締結に至る募集プロセ スの各段階におけるきめ細やかな対応の実現に向け、「不適切な行為の禁止」だけでなく、情報提供義務や意向把握義務など、積極的な顧客対応を求める義務を導入するものです。
●保険募集の際の情報提供義務
⑴ 一般的な義務
情報提供義務は、保険募集人等が、保険募集を行う際に、保険契約者・被保険者が保険契約の締結、又は加入の適否を判断するのに必要な情報の提供を行うことを求めるものです。
具体的には、以下の事項を提供することが求められます。
ア 顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(保険金の支払い条件、保険期間、保険金額等)
イ 顧客に対して注意喚起すべき情報(告知義務の内容、責任開始期、契約の失効、セーフティネット等)
ウ その他保険契約者等に参考となるべき情報(ロードサービス等の主要な付帯サービス、直接支払いサービス等)
⑵ 取扱商品を比較推奨販売を行う場合
ア 取り扱う商品の中から、顧客の意向に沿った比較可能な商品(保険募集人の把握した顧客の意向に基づき、保険の種別や保障(補償)内容などの商品特性等により、商品の絞込みを行った場合には、当該絞込み後の商品)の概要を明示し、顧客の求めに応じて商品内容を説明しているか。
イ 顧客に対し、特定の商品を提示・推奨する際には、当該提示・推奨理由を分かりやすく説明することとしているか。特に、自らの取扱商品のうち顧客の意向に合致している商品の中から、保険募集人の判断により、さらに絞込みを行った上で、商品を提示・推奨する場合には、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等について、説明を行っているか。
ウ 上記ア、イにかかわらず、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等に基づくことなく、商品を絞込み又は特定の商品を顧客に提示・推奨する場合には、その基準や理由等(特定の保険会社との資本関係やその他の事務手続・経営方針上の理由を含む。)を説明しているか。
エ 上記アからウに基づき、商品の提示・推奨や保険代理店の立場の表示等を適切に行うための措置について、社内規則等において定めたうえで、定期的かつ必要に応じて、その実施状況を確認・検証する態勢が構築されているか。
⑶ 商品特性等の客観的な基準等に基づくことなく、特定の商品のみを推奨する場合
商品特性や保険料水準などの客観的な 基準や理由等に基づくことなく、商品を絞込み又は特定の商品を顧客に提示・推 奨する場合には、その基準や理由等(特定の保険会社との資本関係やその他の事務手続・経営方針上の理由を含む。)を説明することが求められます。
例えば、特定の保険会社の系列代理店において、特定の保険会社の商品を提示する場合には、当該代理店が特定の保険会社の系列代理店である旨を説明することで足ります。
●保険募集の際の意向把握義務
顧客の意向の把握等として、保険を募集する際における顧客意向の把握、当該意向に沿った保険プランの提案、当該意向と当該プランの対応関係についての説明、当該意向と最終的な顧客の意向の比較と相違点の確認を行うことが求められることとなったものです。
これまでは、体制整備の一環として、契約を締結する商品と顧客の意向が合致しているかを確認(意向確認)することなどが求められていましたが、今回の保険業法の改正により、意向の把握から、提案商品の説明、意向確認などの一連のプロセスが顧客の意向の把握等として新たに求められることとなりました。
●保険募集人に対する体制整備義務
これまで法令上の体制整備義務は主に保険会社に対して課されており、代理店等の体制整備は保険会社の教育・管理・指導の下で行う仕組となっていました。
これに関し、今般の保険募集人等に対する積極的行為義務(情報提供義務・意向把握義務)の導入や、保険WG報告書等を踏まえ、「保険会社」が監督責任を負う従来の募集人規制に加え、「保険募集人」に対しても、基本的に、業務の規模・特性に応じた体制整備を義務付ける規制を新たに設けるものです。
●おわりに
以上、改正保険業法について、Q&A集「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に関するQ&A」の一部を引用してご説明いたしました。
上記にてご説明した以外にも、非常に多岐にわたる詳細な定めがありますので、詳しくは同Q&Aをご参照いただけますようお願いします。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2016年6月15日号(vol.197)>
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