たとえば、事故で顔面を負傷し、治療をしても目の下に1円玉と同じ大きさの痣(あざ)が残ってしまったとします。
このような場合、後遺障害等級が認められず、保険会社から後遺障害の慰謝料の提示がない場合もありえます。
しかし、このようなケースでも、弁護士が交渉することで後遺障害として認められる場合があります。
交通事故の後遺障害の等級認定は、治療が終わった時に、自賠責保険の調査事務所が労災保険の認定基準によって認定します。
認定基準は「こういう場合は何級」、と事細かに規定しています。
そのため、後遺障害はあっても、基準に当てはまらないと自賠責保険の後遺障害ではないとして、「非該当」とする場合があります。
いくつか例を見てみましょう。
たとえば、先ほどの事故で顔面を負傷し、治療しても目の下に1円玉と同じ大きさの痣(あざ)が残ってしまったとします。
認定基準では「10円玉よりも大きい場合」は後遺障害等級12級とされており、醜状についてそれよりも低い等級はないので、10年玉より小さい1円玉の大きさでは「非該当」となり、自賠責保険では後遺障害はないことになります。
しかし、本人には非常に苦痛で、れっきとした後遺障害であり、加害者には賠償する責任があると思われます。
通常、手の指は1本の神経で痛みや物を持った感覚を脳に伝えます。
したがって、事故によってこの1本を指の付け根で切断してしまうと指先の感覚がまったく消失し、後遺障害12級が認定されます。
しかし、薬指は小指側と親指側に神経がそれぞれ1本ずつあり、それぞれが、脳に感覚を伝えます。
そのうちの1本が切れると、片側の感覚が麻痺して、もう片方の感覚は残ります。
特に親指側の神経が切れると、鉛筆や箸を持つ感覚がなくなり、非常に不便です。
しかし、小指側の指先の感覚が残っているので、指先の感覚の完全消失ではなく、自賠責保険では後遺障害は「非該当」となり後遺障害はないことになります。
しかし、本人には非常に苦痛で、れっきとした後遺障害で、加害者は賠償すべき責任があると思います。
一方の足を骨折して、治療して他方よりも3㎝よりも短い場合は下肢の短縮障害として12級となります。
しかし、上肢には短縮障害の基準がないので、一方の腕を骨折して、治療をして他方よりも短くなっても、骨折自体がちゃんと治れば、自賠責保険では「非該当」なり、後遺障害はないことになります。
しかし、本人には非常に苦痛で、れっきとした後遺障害であり、加害者は賠償すべきだと思われます。
自賠責保険が、迅速を図るために、一定の基準で、裁量なく運用しているのはやむを得ないことだと思われます。
しかし、それで、あきらめる必要はありません。
自賠責の後遺障害認定の網から漏れた後遺障害を救うのが裁判所や弁護士の仕事です。
裁判所に持ち込んで、障害の内容を正確に説明して、自賠責の後遺障害には当たらないけれども、本人にとっては苦痛で場合によっては仕事にも影響するとして、慰謝料や後遺障害逸失利益を認定してもらえるよう努力します。
一方で、交渉や裁判を行っても後遺障害認定を受けることが難しい場合もあります。
たとえば、頚部痛や腰部痛の自覚症状があるケースです。
よくあるのが、動かすと痛いとか、気候の変化によって痛みが出たり、増したりする症状です。
醜状痕は見た目でわかりますし、短縮障害は測ればわかりますし、神経の切断も電気的な検査でわかります。
しかし、痛みの自覚症状は検査機器などで客観的に測定することができません。
したがって、神経系統の障害を示す各種検査結果や治療経過から「受傷部位にほとんど常時疼痛を残す」という自覚症状が治療をしても治らず続いているということが裏付けられないと、「非該当」とされてしまいます。
この場合は、立証が困難であることから、交渉でも、裁判でも後遺障害として認められるのは難しいと思われます。
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