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コラム

2019.02.15

押さえておきたい!高次脳機能障害の等級認定のポイント

高次脳機能障害とは?

高次脳機能とは、それまで経験した知識・記憶や言語と関連付けて理解したり(認知)、言葉で説明したり(言語)、新たに記憶したり(記憶)、目的を持って行動したり(行為・遂行)、社会的な言動ができる(情動・人格)等の能力のことをいいます。

 

高次脳機能障害は、これらの高次脳機能が障害された状態をいいます。

 

高次脳機能障害の症状としては、記憶力・認知力の低下、理解力・判断力の低下、集中力・持続力の低下、社会的行動力(協調性等)の低下等があります。

 

高次脳機能障害は、障害の内容がはっきりしたものではなく、本人、家族、医師によって見過ごされることも多いのですが、現在では、自賠責保険も高次脳機能障害を後遺障害として認定するようになっています。

 

高次脳機能障害の後遺障害等級認定のポイント

自賠責保険における、高次脳機能障害の認定ポイントをご説明します。

 

等級認定のポイントは、大きく分けて、

 ①交通事故による脳損傷の有無

 ②障害の内容・程度

があります。

①脳損傷の有無を判断するためのポイント

交通事故による脳損傷があるというためには、頭部への外傷が認められ、意識障害があり、脳損傷が画像資料から確認できることが必要です。

 

まず、頭部への外傷としては、頭蓋骨骨折、局所性脳損傷(硬膜外血種、硬膜下血腫、脳挫傷、脳内血種)、びまん性脳損傷(びまん性軸索損傷)があります。

 

交通事故によりこれらの外傷があったと診断されている必要があります。

 

 

次に、意識障害が認められるかがポイントとなります。

 

高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいとされているからです。

 

意識障害の評価方法には、JCS(ジャパンコーマスケール)とGCS(グラスゴーコーマスケール)があります。

 

自賠責保険における後遺障害等級認定の場面では、事故後に一定の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いた症状)が存在したか否かをポイントとしています。

 

ここで、注意したいのが、意識障害の意味です。

 

意識障害というと「気を失っている」状態を思い浮かべると思いますが、JSCやGCSにいう意識障害は、「どこにいるかわからない」、「名前や生年月日が答えられない」、「今日が何月何日かわからない」という場合にも当てはまりますので、要注意です。

 

 

3つ目に、脳の画像所見です。

 

画像所見の検査機器には、CT、MRI等があり、CT、MRI等により脳の器質的(物質的な・物理的な)病変が認められることが必要です。

②障害の内容・程度を判断するためのポイント

高次脳機能障害の症状は、全般的な情動障害、認知障害、人格変化等ですから、被害者の日常生活における具体的な症状をつぶさに、正確に把握することが必要です。

 

高次脳機能障害の症状を判断するためには、日常生活状況の報告を行うともに、神経心理学的検査を行うことが必要です。

 

 

まず、日常生活の報告は、所定の書式を用いて行います。

 

日常生活状況の報告は、事故前と事故後の人格・情動の変化を示すものですから、医師や看護師のみならず、家族、職場の同僚、友人・知人等から詳細に聞き取りを行うことになります。

 

これらの聞取り作業によって、事故前と事故後の変化を明らかにしていくのです。

 

次に、神経心理学的検査は、実際の症状を裏付けるための検査です。

 

主な検査には、以下のようなものがあります。

 〇脳の全般的な検査

  WAIS-Ⅲ       いわゆるIQテストです。

  MMS(E)       簡易な認知症検査です。24点以上で正常とされています。

  長谷川式知能評価スケール 簡易な認知症検査です。20点以下は認知症の疑いありとされていま

す。

 〇言語機能の検査

  標準失語症検査(SLTA)、WAB失語症検査

 〇視空間認知の検査

  標準高次視覚検査

 〇記憶に関する検査

  WMS-R

  三宅式記銘検査

  Benton視覚記銘検査

  リバーミード行動記憶検査(RBMT)

 〇その他

  語想起テスト

  かなひろいテスト

  WCST(前頭葉機能検査)

高次脳機能障害で注意すべきこと

高次脳機能障害の患者は、見た目では正常に見えることもあるので、見落とされることも多いのが特徴です。

 

また、医師には異常がわからなくても、日常生活や職場での行動によって異変が発覚する場合もあります。

 

本人に自覚がない場合も少なくありません。

 

そのため、家族や周囲の方が気づくことが非常に重要です。

 

特に、頭部外傷(意識障害・記憶障害がある場合は特に要注意)がある場合には、注意して観察する必要があるといえるでしょう。

 

また、高次脳機能障害が適切に後遺障害として認定されるためには、早期の画像検査や意識障害の検査が重要となることが少なくありません。

 

ですので、気になる場合には、なるべく早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

 

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この記事を執筆した弁護士
五十嵐 亮

五十嵐 亮
(いからし りょう)

弁護士法人一新総合法律事務所 
理事/弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:同志社大学法科大学院修了
新潟県弁護士会犯罪被害者支援対策委員会(平成22年~)、新潟県弁護士会常議員(平成28年度)、長岡警察署被害者支援連絡協議会会長(令和2年~)、長岡商工会議所経営支援専門員などを歴任しています。
主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働・労災事件、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)、交通事故、離婚。事故賠償チームに所属。
著書に、『労働災害の法律実務(共著)』(ぎょうせい)、『公務員の人員整理問題・阿賀野市分阿賀野市分限免職事件―東京高判平27.11.4』(労働法律旬報No.1889)があります。

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