「あおり運転」の厳罰化を規定する道路交通法の施行日が、令和2年6月30日と決定されました。
また、これに伴い、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下「自動車運転死傷行為処罰法」)も改正され、施行日は令和2年7月2日となっております。
今回は、「あおり運転」に関する二つの法律の改正点を解説します。
近年、悪質な「あおり運転」が社会問題化しています。
平成29年6月には、東名高速道路上で、執拗なあおり運転の後、当該車両を追い越し車線上に停車させた結果、後続のトラックが追突してしまい乗車していた夫婦が死亡するという痛ましい事件が発生しました。
この件は、第一審で危険運転致死罪により懲役18年の刑が言い渡されましたが、控訴審において裁判審理の不備が指摘され、現時点(令和2年6月時点)では、第一審の裁判所で再度審理がされています。
また、令和元年8月には、常磐道上で、数キロに渡って蛇行、割り込み、急ブレーキを繰り返して当該車両を停車させた後、当該車両の運転者を殴って負傷させたという事件も発生しました。
この件は、あおり運転部分は強要罪、負傷させた部分は傷害罪として立件されたようです。
このような悪質なあおり運転が社会問題する中で、これを厳罰化すべきとの世論の高まりもあって、今回の法改正に至っています。
今回の改正では、
A.「他の車両等の通行を妨害する目的で」、
B.以下の①から⑩までの行為であって、
(①通行区分の規定違反、②急ブレーキ禁止の規定違反、③車間距離保持の規定違反、④進路変更禁止の規定違反、⑤追越し方法の規定違反、⑥車両等灯火の規定違反、⑦警音器使用等の規定違反、⑧安全運転義務の規定違反、⑨最低速度の規定違反、⑩停車及び駐車禁止の規定違反)
C.「当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法による」運転をした場合
の罰則が強化されました(改正法第117条の2の2第11号イないしヌ)。
これらの行為については、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
また、1回の違反により免許取消処分を受けることになります。
まとめると、今回の改正では、
A.他の車両等の通行を妨害する目的をもって、
B.①から⑩までの道路交通法違反の行為をし、
C.その道路交通法違反行為が、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法であった場合
の罰則が強化された、ということになります。
「あおり運転」と聞くと、典型的には、後ろから車間距離を執拗に詰める(上記③)、走行中の車両の前に出て急ブレーキを踏む(上記②,③)等の運転がイメージされます。
しかし、今回の改正で罰則が強化されたのは、そのような違反態様に留まりません。
たとえば、車間距離を保ったまま執拗にクラクションを鳴らしたり(上記⑦)、同じく車間距離を保ったままハイビームで運転し続けたり(上記⑨)することも、AとCを満たすのであれば,同条違反とされる可能性があります。
自動車運転死傷行為処罰法は、平成25年に可決された法律であり、「危険運転致死傷罪」に該当する各類型を規定しています。
悪質な「あおり運転」の社会問題化を受けて、一般道走行時と高速道路等通行時につき、新たに以下の二つの類型で人を死傷させた場合にも、「危険運転致死傷罪」が成立することとされました。
①「車の通行を妨害する目的」で、
②「走行中の車」(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の、
③「前方で停止」し、その他走行中の車に「著しく近接する方法」で「自動車を運転する行為」(改正法2条5号)
①高速自動車国道又は自動車専用道路において、
②「自動車の通行を妨害する目的」で、
③「走行中の自動車の前方で停止し、その他自動車と「著しく近接する方法」で「自動車を運転することにより」、
④「走行中の自動車に停止又は徐行(略。)をさせる行為」(改正法2条6号)
一般道と高速道路等とで若干規定ぶりが異なりますが、通行を妨害する目的で、他車前方で停止したり車間距離を詰めたりした結果、人が死傷した場合に、危険運転致死傷罪が成立しうるという基本的な内容は同じです。
これにより、上の二つの類型について、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪として、15年以下の懲役(負傷させた場合)、1年以上20年以下の有期懲役(死亡させた場合)の刑罰が科せられます(改正法2条柱書)。
一般道と高速道路等とで若干規定ぶりが異なりますが、通行を妨害する目的で、他車前方で停止したり車間距離を詰めたりした結果、人が死傷した場合に、危険運転致死傷罪が成立しうるという基本的な内容は同じです。
これにより、上の二つの類型について、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪として、15年以下の懲役(負傷させた場合)、1年以上20年以下の有期懲役(死亡させた場合)の刑罰が科せられます(改正法2条柱書)。
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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