弊事務所では、事故賠償チーム、家事チーム、企業法務チームといった専門チームを設け、各分野においてより専門的、先進的なサービスを適切迅速に提供できるよう、日々研鑽を積んでおります。
中でも、事故賠償チームにおいては、交通事故に関する見識を深めるために、毎月勉強会を実施しています。
先日の勉強会では、私が担当となり、『会社役員の休業損害・逸失利益』というテーマで、実務での取り扱いや実際の事案、裁判例を参照しその判断方法等を確認していきました。
今回は、皆さんにその勉強会の一部を紹介させていただければと思います。
交通事故に遭ったため、通院や入院のために仕事を休まなければならなくなった期間について、お給料が減ってしまうことがあります。
休業損害とは、簡単にいえば、交通事故によって仕事ができなくなり減ってしまったお給料分に関する損害のことを指します。
交通事故実務の中で、取締役や監査役といった会社の役員(「社長」のような肩書の方を想像してもらえるとわかり易いと思います。)の方が被害者の場合、休業損害の額が問題となることが多々あります。
以下では、①なぜ会社役員の休業損害が問題となるのか、②どのような方法で会社役員の休業損害を判断しているのか、③休業損害の判断要素といった点を説明していきたいと思います。
ではまず、①なぜ役員報酬の休業損害が問題となるのかについて説明をします。
役員報酬は、基本的に会社の株主総会決議で決定されることになります。
そのため、時間や稼働日数に応じて給料が計算される平の従業員(「サラリーマン」と呼ばれる方を想像してもらえるとわかり易いと思います。)とは給料の決定方法が根本的に異なります。
特に、親族のみで経営をしている規模の小さい会社においては、若い会社役員が就任し、その役員の生活を保障するために年齢や仕事内容に不相応な高額の報酬を設定することもあります。
また、役員報酬として会社のお金を支払うことは、法人税の対策にもなります。
会社の経費(人件費)として、役員報酬を支払えば、その分、会社の利益は小さくなるため、それに伴って法人税も小さくなります。
本来休業損害とは、先に説明したとおり怪我をして仕事ができなくなったことに対して、その得られるはずだったお給料を保証するという損害費目になります。
しかし、上記のような会社や役員の都合によって報酬が設定されているとすれば、必ずしも仕事ができる、できないにかかわらない事情によって報酬が設定されていることもあるということがわかります。
そのような部分についても、「交通事故で怪我をする⇒お給料が減る」といった休業損害の考え方に当てはまるものといえるのか、という点が問題になります。
では次に、②どのような方法で会社役員の休業損害を認定しているのか、という点について説明をします。
上記のような問題点を捉えて、交通事故実務では、「労務対価部分」という考え方を用いて会社役員の休業損害を判断することにしています。
どういう考え方かというと、役員報酬のうち、純粋に働けないことによって支給されなくなっただろう一部分(つまり「労務対価部分」)に限定して休業損害を認めるという方法です。
労務対価部分と比較して、役員報酬のうち労務対価部分以外の報酬については、「利益配当部分」と呼ばれることもあります。
簡単にいえば、役員報酬が月額50万円の取締役がいたとして、労務対価部分が30万円、利益配当部分が20万円であると判断されれば、月額30万円のお給料として、休業損害を計算するということになります。
上記のような、労務対価部分と利益配当部分の切り分けができれば、純粋に交通事故で働けなくなったことにより被った休業損害額を裁判所が認定できるようになります。
では次に、会社役員の休業損害、つまり③労務対価部分の判断要素について説明をします。
ひとくちに「労務対価部分」といっても、どのようにして判断するのかは簡単ではありません。
会社内のあらゆる事情を総合的に考えて判断されることになります。
裁判例等も踏まえると、下記のような判断要素が挙げられます。
会社の規模が小さくなるほど、親族経営の会社である割合も多くなります。
そうすると、会社役員の個人的な事情を加味して、役員報酬の全額が労務対価部分と判断される可能性は小さくなります。
また、会社の利益が増加しているわけでもないのに役員報酬の金額が増加しているような場合にも、役員の個人的な事情や会社の都合で報酬額を増加したと判断される傾向にあるようです。
会社役員の中には、役員に就任はしているものの、実態は会社に出社せず特に仕事をしている様子もない方もいます。
その場合の労務対価部分は小さいものと認定され易いでしょう。
その反面、会社の利益の大部分を獲得している会社役員については、役員報酬のほとんどが労務対価部分であると判断される可能性が高くなります。
年齢も若く、経験の浅い会社役員が他の経験豊富な会社役員と比較しても高額の報酬を受け取っている場合は、利益配当部分は大きいものと判断される可能性が高いです。
業務の内容に比して、他の役員・従業員との報酬・給与額に差があるかという観点からの比較も重要になります。
労務対価部分の認定という場合には、特に同じような業務内容の従業員がいれば、その従業員のお給料との金額の比較が大きな意味を持つことになるのではないでしょうか。
交通事故に遭った後、会社役員の休業により、役員報酬を不支給とする、もしくは、減額する対応をとった場合、その不支給、減額となった部分をもって労務対価部分とする評価に結びつき易いものといえます。
上記の考慮要素はあくまで一例であり、その他にも、裁判例の中には、被害者の会社役員と同年齢帯の方の平均年収(「賃金センサス」と呼ばれているものです。)を参照して労務対価部分を認定しているものもあります。
上記の判断要素だけでも、会社の経営状況や、他の会社役員、従業員のお給料、会社役員の業務内容まで様々な事情を考慮して労務対価部分を判断していることがわかります。
今回は、会社役員の方が怪我を負った場合の休業損害のみに絞って紹介をさせていただきましたが、後遺障害を負った場合の逸失利益、運悪く亡くなってしまった場合の役員報酬の取り扱いに関しては、同じような問題意識から独特の問題が生じます。
ここまで読んでいただいたとおり、会社役員の方の休業損害については、専門的な問題が多々含まれ、どのような主張立証が必要かに関しては、専門化の助言が必須になるものと思われます。
上記のような問題に直面した方は、是非弊事務所へのご相談をご検討いただければと幸いです。
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