事業所得者の休業損害や逸失利益を算定するにあたり、その基礎収入は、前年までの確定申告書等の税務資料によって証明される所得の額をもとに認定されるのが一般的です。
しかしながら、事業所得者の中には①確定申告をしていない方、②確定申告をしているけれど、税金対策のため収入を過少に計上したり、経費を水増しするなどして、過少申告をしている方が一定数いらっしゃいます。
今回は、事業所得者から申告外の所得があることを主張された場合の基礎収入の認定について解説します。
申告外所得が主張された場合の所得の認定方法には大きく分けて以下の2つがあります。
実際の収入(総売上高)と諸経費(仕入原価、人件費、広告費等)について、会計帳簿、伝票類等の信用性の高い証拠によって立証が可能な場合には、これによって計算される実収入(実所得)をもとに申告外所得を認定できます。
上記の方法により実収入(実所得)を認定することができない場合でも、業務帳簿や預貯金通帳等の証拠によって相当の収入があると認定できる場合には、賃金センサス等の統計資料にもとづいて基礎収入を認めることができる場合があります。
具体的には、少なくとも賃金センサス等の統計資料上の平均賃金額の所得を得られる相当程度の蓋然性が認められる場合には、平均賃金額を基礎収入とすることができます。
平均賃金額の所得を得られる蓋然性までは認められないものの、ある一定額以上の所得を得られる相当程度の蓋然性が認められる場合には、平均賃金額から一定の割合で減額した額(例:全学歴・全年齢の男性労働者の平均賃金の8割)を基礎収入とすることが可能です。
過去の裁判例をみると、主張された実収入をそのまま基礎収入として認定した例は極めて少なく、主張された実収入を基礎収入と認めることはできないとしたものが多数を占めます。
その理由としては、立証が不足していることや、提出された資料の信用がないことなどがあげられており、証拠の信用性は厳格に判断される傾向にあることが読み取れます。
実収入の認定が難しく、統計資料(賃金センサス等)による所得の認定が問題となるケースでも、「相当程度の蓋然性」の要件は、被害者の年齢、性別、健康状態、学歴、職業や、営業規模や出入金の状況、営業の状況、仕事の形態、生活状況、事故前の現実収入などの事情が考慮され、厳格に判断されるのが実情です。
このように、実収入を立証するにせよ、一定額以上の所得を得られる蓋然性を立証するにせよ、そのハードルは低くありません。
申告外所得の主張は自己矛盾の主張であるので、その認定は厳格になされるべきであるという考え方が根底にあると考えられます。
また、確定申告を正確に行っていない方の中には、伝票類等の立証資料を十分に保管・保存していない方が少なくなく、このことも上記のハードルを乗り越えられない要因の一つとなっていると思われます。
申告外所得を基礎収入として認定してもらうには、判断要素に沿った主張を組み立てるのとあわせて、信用性の高い証拠を集めることが重要です。
交通事故の被害にあい、申告外所得の認定についてお悩みの方は、ぜひ一度弁護士への相談をご検討ください。
[参考文献]
民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準 平成18年版下巻(講演録編)13~20頁/公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部
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